FACE to FACE

重堂 多恵 × 外山 尚吾

各方面で活躍する医学生の素顔を、同じ医学生が描き出すこの企画。今回は対談形式でお送りします。

 

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外山(以下、外):重堂さんとは全国各地の様々なイベントでよくお会いしましたね。どのような思いで積極的に学生活動に取り組んできたのですか?

重堂(以下、重):私は高校時代から地域医療に興味があり、地域枠での入学を考えて、様々なイベントに参加していました。一方で、医師になったら人生をすべて捧げなければならないというイメージもあり、恐怖心さえ抱いていました。

けれどその恐怖心は、入学後に参加した地域医療関連の学内活動によって払拭することができました。プライベートを犠牲にするのではなく、あくまでやりがいのある仕事として、誇りを持って医療に取り組めばいいと先輩医師から学んだのです。

それからは、地域枠学生への偏見をなくしたいという思いもあり、学外活動にも積極的に参加するようになりました。すると、地域医療に携わるにしても、厚生労働省で働く、連携システムを構築するなど、様々な方法があると知りました。周囲の学生を見て「私はこのままでいいのか」と悩むこともありましたが、様々な興味・関心を持って多様な道を選んでいる人がいると知り、それぞれの選択に優劣はないと感じるようになりました。その結果、今は「普通の医師」を目指そうと思っています。

:「普通の医師」とは?

:求められることにきちんと対応でき、不快感を与えず、いつまでも謙虚な「普通の医師」であり続けることは、簡単なようでとても難しいと思います。また、そのような「普通の医師」が最も求められている存在だと感じ、そうなりたいと思いました。

外山くんはどのような関心を持って活動してきたのですか?

:僕は入学当初はIPS細胞の基礎研究を志していましたが、周囲の人ほど熱意がないと気付きました。かといって、なし崩し的に臨床医になることにも疑問がありました。そんな1年生の夏に参加した僻地医療実習で、孤独死対策の見守り活動を見る機会がありました。望んで独りで過ごす人もいるなか、介入がどこまで正義かを考えるスタンスに、自分の関心との近さを感じ、その後の二つの志向が生まれました。一つは医学教育、もう一つは医療人類学です。

医学教育分野は、「どういう医師になるべきか」という問いに、「どのように医学を学ぶか」という切り口でアプローチできるものでした。これまで学内外で、教員と学生の意見交換を促進する活動に携わりました。

もう一方については、低学年の頃は公衆衛生に関するイベントに携わったこともありましたが、次第に自分の関心の対象がマス・アプローチではなく、その医療が土台にする前提そのものを疑うことにあると気付きました。そんな時に中川米造の「医学概論」に出会い、哲学・社会学・人類学的に医学を俯瞰する研究に魅力を感じるようになりました。そして、医学生から医師になろうとしている自身について記録・考察する人類学的研究などを行ったことで、ようやく自身が医師になる意味を見出せた気がします。今後は、まず一人前の臨床医になり、その経験を後に研究につないでいきたいです。

:私たちは「医師になること」に葛藤を抱えながらも、自身と向き合った結果、今は臨床医になることに前向きになれたという共通点があったのですね。

:同じような悩みを持つ医学生は多いと思いますが、どれだけ迷ったっていいし、何者かにならなければと焦る必要もないと思います。最終的に自分の道を見つけられればそれでいい。

重堂 多恵(旭川医科大学6年)
大学入学時よりCIK(地域医療を語る会)とMed-Edu(道内各地の小中高生へ健康教育を行う団体)で活動。大学3年以降は学外にも活動の幅を広げ、ワークショップの企画運営、書籍やWEBメディアでの執筆等を経験した。臨床実習を経て現在は病理医を志している。将来は他科の医師と異なる視点で臨床に携わり、医療に貢献していきたい。

外山 尚吾(京都大学6年)
2020年8月、卒前医学教育における人文学・社会科学の扱いについて調査した原著論文を、筆頭著者として執筆し、『医学教育』誌上に掲載された。現在は、医学生が医師になりゆく過程を教育学的・文化人類学的な知見から明らかにする研究に取り組んでいる。医学とは何かを問う「医学概論」の現代的再構成に強い関心を持つ。

※医学生の学年は取材当時のものです。