専門医への道のり 内科系(前編)

専門医を取得した先輩医師に、これまでの歩みを聴きました。

History

2010年帝京大学医学部 入学
2016年
(1年目)
東北大学病院 臨床研修 実家が膠原病内科で開業していることもあり、内科系に進むことは決めていた。そのため、内科を多く選択できることが、臨床研修病院を選ぶ決め手となった。
2018年
(3年目)
帝京大学医学部附属病院 
腎臓内科 専門研修
帝京大学大学院医学研究科 入学
専門研修中に大学院にも行ける専門研修プログラムを探していたら、出身大学のプログラムがそれに該当した。
2018年
(3年目)
結婚
2020年
(5年目)
横浜労災病院 腎臓内科内科専門医制度の地域研修プログラムにて、半年間赴任した。市中病院なので規模は小さいものの、大学病院と同様の症例を経験することができた。
2020年
(5年目)
帝京大学医学部附属病院 
腎臓内科 専門研修
この頃になると、自分の裁量で対処できることが増え、同じチーム内の自分が主治医ではない患者さんにも目を配れるようになった。
2021年
(6年目)
出産大学院の4年目に、実験のために臨床を持たない期間があり、そこに育児期間を重ねている。

 

落合 文佳先生
帝京大学医学部附属病院 腎臓内科

 

 

 

 

 

 

専門医への道のり 内科系(後編)

年次が上がると自分の裁量でできることが増え、
周りにも目を配れるようになりました。

腎臓内科を志したきっかけ

――落合先生が腎臓内科を志したきっかけを教えてください。

落合(以下、落):実家が膠原病内科で開業していることもあり、臨床研修が始まる時点で内科に進むことは決めていました。日本内科学会の学生向けの講演で、東北大学の腎臓内科の教授の話を聴いたことがきっかけで、腎臓内科に興味を持ちました。東北大は臨床研修の間に内科を多く選択できることがわかり、実家や出身大学のある関東を離れ、東北大で臨床研修を受けることにしました。最終的には膠原病科とも迷いましたが、お世話になった腎臓内科の先生に相談したところ、「腎臓内科は膠原病も範囲として含むので、腎臓をメインにやっていくのがよいのでは」とアドバイスを頂き、腎臓内科に決めました。

――腎臓内科のどのような点に魅力を感じたのですか? 

:急性疾患と慢性疾患の両方を診られるところです。また、腎臓内科の患者さんは他の疾患を併発していることも多く、高血圧や糖尿病など一般的な内科疾患を診ることもできます。腎臓を通じて全身を診ることができるのが、腎臓内科の大きな魅力だと思います。

――専門研修で帝京大学に戻られた理由をお聴かせください。

:臨床研修中に「研究も若いうちに経験したほうがいい」と助言を受け、専門研修の間に大学院にも行きたいと思っていました。それが可能だったのがたまたま出身大学のプログラムだったのです。また帝京大のプログラムは、他に比べて腎臓内科を経験できる期間が長いことも魅力でした。

――専門研修ではどのような経験をされたのですか?

:1年目の最初の半年間で腎臓内科を、残りの半年間で総合内科を回りました。総合内科では、チーム制で呼吸器・循環器・消化器・内分泌などの疾患を診ていきます。1~2か月ごとにチームが代わり、チームの上の先生が担当する疾患を学ぶ形です。

2年目は、最初の1か月だけ血液内科を回りました。臨床研修で血液内科を十分に回れなかったことを教授に相談したところ、融通していただきました。その後は9月まで腎臓内科、次の3か月間で救急を回り、残りはまた腎臓内科を回りました。

3年目は、専門研修プログラムの一環で他の病院に行くことになっており、私は半年間、横浜労災病院に行きました。一般的には市中病院と大学病院では経験できる症例が異なるものですが、横浜労災病院は規模は小さいものの、大学病院と同様の症例を経験できました。残りの半年は大学病院に戻り、腎臓内科を経験しました。

――専門研修中、腎臓内科医としてどのようにステップアップしていくのですか?

:チーム制を取っていることもあり、年次によって経験できる症例が異なるということはなく、専門研修1年目から様々な患者さんを受け持ちます。変化していくのは自身の裁量ですね。1年目は逐一上の先生に相談しますが、3年目になると相談する機会は減り、自分の裁量で対処する場面が増えていきます。この頃には周りを見る余裕もできるため、同じチーム内の自分が主治医ではない患者さんにも目を配って、主治医の先生が外勤のときには対応できるようになってきます。

また腎臓内科とはいえ、患者さんが腎臓のことだけを訴えてくることは稀で、様々な主訴から、どんな疾患を抱えているかを診断する必要があります。専門研修中に他の内科を経験することで、その患者さんに内科的に何が起きているかを総合的に診断できるようになりますし、専門の先生に委ねなければならないかどうかという判断やタイミングも身につくように思います。

――印象的だった症例はありますか?

:3年目で経験したTAFRO症候群*という免疫疾患の患者さんです。胸水と腹水が溜まって挿管が必要になり、ICUで全身管理しながら透析もし、免疫抑制剤を使って治療しました。診断をつけるところはチームの先生に助けていただいて、その後は自分で症例報告を調べ、麻酔科や血液内科の先生などに相談しながら治療方針を決めました。患者さんは、最終的には歩いて退院されるまでになりました。

――今後の展望をお聴かせください。

:この3月に専門研修プログラムの修了認定を得て、7月に専門医試験を受験する予定です。実は修了認定を得た後に産休に入り、4月に出産しました。大学院の4年目に、実験のために臨床を持たない期間があり、そこに育児期間を重ねています。論文は既に投稿しているため、それが承認されれば学位が取得できる予定です。

今後どのような働き方になるかは未定ですが、ずっと働き続けたいとは考えています。あと1年くらい研修すれば、サブスペシャルティの腎臓内科専門医の受験資格を得られそうなので、何とかその取得までは頑張りたいですね。

 

*TAFRO症候群…明らかな原因なしに急性あるいは亜急性に、発熱、全身性浮腫(胸水・腹水貯留)、血小板減少をきたし、腎障害、貧血、臓器腫大(肝脾腫・リンパ節腫大)などを伴う全身炎症性疾患。

※取材:2021年6月
※取材対象者の所属は取材時のものです。