交流ひろば

離島地域の中高生の医療系への進学応援プロジェクト

シマナビnet+(任意団体NPO GlocaLand) 琉球大学医学部医学科6年 大見謝 望

「シマナビnet+」は、離島地域に暮らす中高生に向けたイベント等を企画するプロジェクトです。島の子どもたちに医療系進学という将来の選択肢を増やすことや、医療の魅力を伝えること、大学受験の学習面・精神面でのサポートや勉強へのモチベーション向上につながる企画を実施しております。

プロジェクト発足のきっかけは、離島での医療従事者不足という課題を解決するために、島出身の医療従事者が増えれば、将来的に離島医療に携わる人材が増えるのではないかと考えたことです。現状として島の学習環境や情報量、大学進学に対する意識などの面で、医療系進学には高いハードルがあります。そこで大学生の立場でできることとして、島で暮らしながら医療系進学を目指す中高生をサポートし、目標達成を応援しています。

現在、全国の医療系学生の有志が集まり、日本各地の離島地域の子どもたちを対象に活動しております。

これまでに実施した企画を紹介します。

■『中高生×医学生Onlineトーク』

(2020年9月26日(土)・10月3日(土)開催)

大学生と関わる機会が少ない離島地域の中高生に向けて、気軽に大学生と話せるオンラインイベントを実施しました。医学生が直接、入試情報や大学生活について話したり、進路や受験勉強などの質問・相談に答えるなどしました。

(参加地域:徳之島、沖永良部島、宮古島)

■『リモート学習ナビ』

離島地域の高校生を対象に、オンラインでの個別学習指導を行う企画です。大学受験の勉強面だけではなくメンタル面でもサポートしていきます。一人ひとりに寄り添って、継続的にフォローしていく取り組みとして実施中です。

■『現役大学生による面接対策サポート』

(2021年1月30日(土)・2月13日(土)開催)

大学入試が近づいてきた時期に、受験生応援企画として面接試験対策のイベントを実施しました。離島ではなかなか機会の少ない面接練習を行い、面接のポイント解説やアドバイス、入試本番に関する質問・相談に対応しました。

(参加地域:徳之島、石垣島)

このような活動が、将来的に離島地域の医療従事者不足を改善する一助となることを信じ、今後もシマナビnet+は、島の子どもたちの夢を応援するプロジェクトとして活動していきます。

シマナビnet+にご興味がある方や一緒に活動してみたいという方は、お気軽にお問い合わせください。

WEBhttps://www.glocaland.org/%E3%82%B7%E3%83%9E%E3%83%8A%E3%83%93net-1-1

E-mail:contact[a]glocaland.org([a]をアットマークに変えてください)

 

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ディベートという学び方から見えたもの 人と医療の研究室(ひとけん)Student Groupのお誘い

人と医療の研究室 京都府立医科大学医学部医学科4年 李 展世

「人と医療の研究室(ひとけん)Student Group」は医療と社会の関わりに関心のある学部生によって構成され、医師などにより構成される「人と医療の研究室」と連携して活動しています。ひとけんでは毎月定例会を開催しており、読書会、ディベート、その他のレクチャーなどが行われます。本稿ではそのうち、先日の定例会で行われたディベートを通して見えてきた問いについて紹介したいと思います。

今回のディベートは「小児科病棟でのホスピタルクラウンの常勤化を推奨すべきである」というテーマを扱いました。ホスピタルクラウンとは、病棟において活動を行うクラウン(ピエロ、道化師)のことで、主に長期の入院生活を送る子どもをその活動の対象としています。これは、私たちが現在関心を持っているトピックの一つ、「アートと医療の関わり」[1]から派生した話題でした。

肯定側が提示した論点は、①ホスピタルクラウンは小児患者の不安や疼痛を軽減する(Lopes-J_nior LC, et al, 2020)②他者との関わり方を患児が学ぶことができ、その積極性が向上する ③患児の周囲の人間関係を活性化する―といったものでした。一方、否定側が提示した争点は、①必要な費用に見合う効果はあるのか②病院での事故発生リスクが上昇する③ホスピタル・プレイ・スペシャリスト[2]等の他職種がその役割を担える―といったものでした。

このディベートを通して見えてきた興味深い視点が二つありました。一つ目は、否定側の「海外研究のエビデンスは、日本にそのまま適用できるのか」という反駁から、ケアの場において文化の違いがその方法や効果にどれほど影響するか、という問いです。ホスピタルクラウンは「笑い」や「人間関係」がそのケアの中心的射程と考えますが、これらは文化によって性質が大きく異なります。異なる文化間で比較したとき、ホスピタルクラウンが果たして同じくらいの「笑い」を生むのか、あるいはそもそもその「笑い」に同じくらいの効果があるのか、検証を行うことは意義がありそうです。

二つ目は「ホスピタルクラウンが担う『学び』の提供は病院の役割なのか」という反駁より、病院は患者に対してどこまでの役割を担う場であるか、という問いです。「楽しさ」や「感動」のような、医療において必ずしも第一に優先されないと思われるものを私たちはどこまで重要視すべきなのでしょうか。

その他定例会では、「地域社会において医療者は医療機関外で健康相談に乗るべきである」「オンライン診療を初診から推奨すべきである」「独居する前期高齢者が不眠を主訴に近医受診した場合、BZD薬を処方すべきではない」といった様々なテーマのディベートを行ってきました。ディベートというアクティブな学びを通した知識の習得と論理的思考から、人と社会、医療について考えを深めてみませんか。

「人と医療の研究室Student Group」ではメンバーを募集中です。お気軽にご連絡ください。

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《参考文献》

[1]アートと医療 Art and Medicine -情報掲示板- https://bit.ly/3tShLEJ

[2]チャイルド・ライフ・スペシャリスト協会. https://bit.ly/3jytIuu (2021/4/10アクセス)

 

※寄稿:2021年5月
※寄稿者の所属は寄稿時のものです。