医学生 ×大学職員
同世代のリアリティー
大学職員 編(前編)

今回のテーマは「大学職員」
学生の皆さんが、履修登録などの時にお世話になる大学職員。普段どんな仕事をしているか、知っていますか?今回は、総合大学の事務職員3名を招いて、医学生がお話を伺いました。
身近だけど意外と知らない大学職員のお仕事
渡邉(以下、渡):皆さんは3人とも同じ大学で働いていらっしゃるんですよね。それぞれどういったお仕事をされているんですか?
社A:うちの大学は総合大学なのですが、事務職員の所属は、本部と部局に分かれています。大学全体の事務を取りまとめるのが本部で、学部ごとに設置されているのが部局です。入職してしばらくは、大抵2年ごとに、本部と部局を交互に異動します。
私は入職後すぐは、本部で学生の就職支援を担当していました。今は法学部の大学院に所属していて、履修登録や授業科目表の作成、大学院入試などに携わっています。
社B:私は最初、本部の奨学金や授業料を扱う部署に配属されました。今も本部にいて、大学で行う様々な会議を扱う部署に所属しています。会議にも、学部の会議、専攻単位の会議、全学の会議など、色々あるんです。それぞれの会議の議事録を作成したり、出欠の取りまとめをしたりしています。
社C:私は、初めは理学部の所属でした。先生たちの勤怠管理をしたり、入試の試験監督などイレギュラーな仕事があれば、それに応じた手当を出したり。今は本部で、大学の運営について評価する部署に所属しています。世界大学ランキングなどに提供する、学生人数や職員の人数のデータを取りまとめたりするんです。
山村(以下、山):大学の職員って、窓口で学生の対応をしてくれる人、というイメージでしたが、そういう仕事ばかりではないんですね。
社C:そうなんです。私自身学生時代は、職員のことを「窓口にいる人たち」としか思っていなかったのですが、実際に働き出してからは、学生さんと接しない部署ばかり回っています。想像とは違いましたね。
岩間(以下、岩):大学職員の人たちって、学生の休暇の時期は何をしているんですか?
社A:想像つかないですよね。私は、学生のときは正直、「大学職員になったら、夏休みは暇なんじゃない?」と思っていました(笑)。でも、そんなことないんですよ。例えば8月は、次の学期の履修登録の準備や、夏に行われる大学院の試験の対応などで、とても忙しいです。冬には入試関係の仕事や、次年度のシラバス作りがある。もちろん部署によって繁忙期・閑散期はありますが、なんだかんだ一年中忙しいですね(笑)。
社C:どの部署でも共通しているのは、年度末と年度初めは業務量が増えることかもしれないです。あとは、入試・オープンキャンパスの前後が忙しいですね。イベントがあると、準備や運営は大変ですが、学生さんや受験生の役に立っている実感があって、とても楽しいです。
職員と学生の関係づくり
社C:働き始めたばかりの頃は、学生さん、特に大学院生の人などと接すると、自分よりもずっと年上だ、というようなこともありました。
社A:「職員だからって、年下相手に敬語を使わせてすみません」と思う時もあります(笑)。同世代の人と話していると、実は自分が学生だった時に同じ授業に出ていた、なんてこともありました。
社C:皆さんは、普段大学職員と接する機会はありますか?
岩:私の大学は、単科大学で医学部しかないんです。その分職員さんも少なくて、学生と関わる学務課の人は10人くらいしかいません。そのせいか、学生と仲が良く、普段からおしゃべりもしています。
社A:職員と学生さんがたくさんコミュニケーションをとれる環境は理想的ですよね。私が今担当している専攻も、人数がとても少ないので、学生さん一人ひとりにきめ細かく対応できます。でも、相手にする学生さんの人数が多い部署だと、一人ひとりに丁寧に関わる余裕がなくなってしまうのも事実です。
社B:大学職員は、どうしても「対応が冷たい」「たらい回しにされる」などと言われがちですよね。私も学生時代は、職員の対応にもやもやするようなこともありました。
ただ、職員になってわかったこともあるんです。以前、奨学金関連の仕事をしていたのですが、ひとくちに奨学金と言っても、日本学生支援機構や民間の奨学金、大学が出している奨学金など種類がたくさんあって、担当者がはっきり分かれているんです。自分以外の人が何をしているのか全然把握できないので、自分は仕事に余裕があっても、忙しそうにしている人を手伝えないこともある。大きな組織で働くのは難しいですね。
医学生 ×大学職員
同世代のリアリティー
大学職員 編(後編)
「大学で働こう」と思った理由
山:皆さんはどうして大学職員になろうと思ったのですか?
社C:私は、大学で教育政策を研究していたんです。教育に関わりたいという思いをずっと持っていたのですが、教員として現場で働くことよりは、学ぶ環境や制度をつくることの方に興味がありました。就職活動の際は文部科学省など、公務員として働くことにも興味があったのですが、採用情報サイトで「大学職員」という職業を見つけて、学生や学習環境に近いところで働ける、という点に魅力を感じました。
社B:私は、大学では教育心理学を学んでいました。大学院に進学する人が多い学科で、自分も進学することも考えたのですが、大学院に進んでやっていけるのかな、という思いもあって。色々と悩んでいるうちに、「大学で働く」という発想に思い至りました。自分で研究ができなくても、職員として学生や先生方のサポートすることはできる。自分の経験を活かせるし、大学の研究・教育に貢献することもできますよね。それはすごく素敵なことなんじゃないか、と思ったんです。
社A:私はもともと、公共性の高い仕事をしたいという思いがあって、インフラ業界などに興味を持っていました。でもある時、大学も研究機関で、広く社会一般に影響を与える場所じゃないか、ということに気付いたんです。質の高い研究が行われれば、広く世の中一般、世界中に影響をもたらすこともできる。そんな機関に、一職員として貢献できたらいいな、と思うようになりました。
大学で働くための研鑽
渡:研修などはありましたか?
社C:研修はとても充実していますよ。入職して最初の2か月は、同期全員で一斉に研修を行いました。仲の良いクラスのようで、楽しかったですね(笑)。
社A:研修が始まってしばらくは、講義が多かったです。後半になると、大学のマネジメントに関して、興味のある分野ごとにグループを作って、大学に提案する、といった課題もありましたね。放送大学でマネジメントに関する講義を受けたりもしました。単位をとるために、座学と期末試験とレポート提出が必要で、学生時代に戻ったようでした。
社B:附属病院にも見学に行きました。屋上のヘリポートを見せてもらったり、ALSシミュレータを見せてもらったりもしましたね。
山:事務職員の方もそんなことをされるんですね。
社C:はい。実は、大学職員として就職しても、病院配属になることもあるんです。彼らは、医療関係の調達や経理など、特殊性の高い仕事をしています。お医者さんと同じように、泊まりで当直もあるんです。
岩:確かに、医療者だけでなく、事務担当の方も病院にいないと困りますよね。
辛い仕事も乗り越えていくために
岩:働き始めて、大変なことはありましたか?
社A:私は、就職支援に携わっていた頃は、どこまで学生に関わるべきなのか、境目がわからなくなったり、そのことで混乱してしまうこともありました。一時は「私は職員に向いてないのかもしれない」と悩んでいたのですが、今の部署に異動してからは、そういうことはなくなりました。今の仕事は、規則に従って物事を忠実に実行する、という種類の仕事で、それが自分に合っていたんでしょうね。
「仕事にも向き不向きがあるんだ、うまくいかなくても、自分ばかりが悪いんじゃないんだ」と思えたのはよかったです。
社C:私が就職して感じたのは、仕事がハードでも、自分が興味のあることだったら耐えられるということです。自分が取り組んでいる仕事が、直接ではなくても、どこかで自分の興味のあることにつながっていると思うと、踏ん張ることができました。
社B:私たちは大学の職員で、基本的に自分の大学の教員や学生という、限られた人にしか関わりませんが、お医者さんはもっと色々な人に接しますよね。自分と全然違う世界で生きている人を理解するのは大変だろうな、と思います。
岩:そうですね。医師は本来、幅広く様々な方と接するのに、医学部や医師の世界だけにこもっていると、世界が狭くなってしまうと思うんです。だから、いろんな社会を見て、様々な人の気持ちがわかるようにするのは大事だと思いますし、今日も勉強になりました。どうもありがとうございました。
※医学生の学年は取材当時のものです。



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