日本医師会の取り組み
日本医師会の医師賠償責任保険
医賠責保険料を引き下げ
研修医・30歳以下の勤務医の会費負担をできるだけ少なく
医療事故や損害賠償への備え
夏休みのこの時期、医学部6年生の多くは研修先の希望を決め、国家試験に向けた勉強に拍車がかかってくる頃かと思います。そして、医師免許を取得すれば一人の医師として診療や診察に携わることになります。
実際の現場では、医師も医療機関もミスや事故を防ぐために様々な取り組みをしています。しかし、リスクをゼロにすることはできません。治療や検査のために行ったことが、思わぬ結果を引き起こしてしまうリスクは誰もが負っています。また、患者さんの期待が大きければ大きいほど、期待通りの結果にならなかったときに、医師や医療機関の診療や診察に問題があったのではないかと考えられ、損害賠償請求につながることもあります。
患者さんから見れば研修医であっても医師であることには変わりはなく、責任を負う事には違いはありません。実際に医療事故において、研修医の責任として高額の負担を負ったケースもあります。医師として診療にあたるうえで医師賠償責任保険(医賠責保険)への加入は必須のものと言えるのではないでしょうか。
日医医賠責保険の特長
日本医師会では、研修医や勤務医もA会員(表)になると、新たな手続きなしで医賠責保険の補償を受けられます。
医賠責保険は、様々な形で募集されていますが、日本医師会の医賠責保険(日医医賠責保険)には他にはない、事故に関する調査・相手との交渉・訴訟や示談まで含めた総合的なサポート体制を有するという特長があります。
事故が発生すると、通常は当事者や保険会社との交渉や弁護士の選定、訴訟になれば裁判所に行く必要も出てきます。その間、仕事は滞り勤務先や患者さんにも影響が生じてしまいます。
特に医療事故は他の事故と違い、専門性が高いため診療等に過失があったのかの判断が難しいという特徴があります。日医医賠責保険は都道府県医師会・日本医師会・保険会社が全面的にバックアップし、医療事故に詳しい弁護士への委嘱をはじめ調査から相手方との交渉・訴訟を全面的にサポートします。
「日医医賠責保険は、日常の診療が忙しい医師の心身の負担を極力減らせるようになっています。医師が安心して診療に従事できる環境を整えることは日本医師会の役割の一つです。
大きな病院では、医療事故が起きた際に担当医師個人に対しても損害賠償請求を行うケースも増えています。しかし、病院が加入している保険によっては勤務医個人の責任については補償の対象とならないこともあります。日医医賠責保険は医師個人が対象なので、勤務先がどのような保険に入っているかにかかわらず、医療事故に備えられます。日本医師会に報告される医療事故は年間300件ほどですが、その中には医療機関に責任はあっても担当医師個人の過失による事故とはいえないようなものもあります。開業医だけでなく勤務医・研修医も加入していると安心な制度です。」
勤務医・研修医の会費引き下げ
日本医師会の会員になると、医賠責保険による医療事故のサポートだけでなく、生涯教育制度・医師資格証の発行・医師年金など様々なサポートやサービスを受けることができますが、2018年4月より勤務医・研修医の医賠責保険料の引き下げに伴い、日本医師会の会費を引き下げることにしました(表)。特に30歳未満の勤務医や研修医に関してはできるだけ会費負担が少なくなるように、医賠責保険料の一部を日本医師会が負担し、非常にリーズナブルな水準になります。
(表)研修医・勤務医の日本医師会費(2018年4月~)
会員区分 | 会費内訳 |
---|---|
A②B会員 (勤務医で日医医賠責保険に加入) | 68,000円 うち、40,000円は日医医賠責保険部分 |
30歳以下のA②B会員 (勤務医で日医医賠責保険に加入) | 39,000円 うち、11,000円は日医医賠責保険部分 |
A②C会員(減免適用後) 15,000円 | 39,000円 うち、15,000円は日医医賠責保険部分 |
※現在、研修医については会費減免を適用しています。
B・C会員は日医医賠責保険の対象外となります。
「日本医師会の強みは豊富な情報量です。医療に関する新しい制度や法律ができたときには、講演会等を日医が開催していて、そこで色々な方が勉強しています。また、医師会は、現場の医師の声を集めて必要なところに届けることを目的とする団体です。医療制度に現場の声を反映させ、これからの医療をよくしていくためには、若手の皆さんに日本医師会に参画してもらうことが不可欠ですし、そのことが、現場で働く皆さん自身の働きやすさにつながっていきます。今回の会費改定を機に若い皆さんにも是非日本医師会に入会していただきたいです。」

日本医師会医師賠償責任保険のメリット
専門家が調査・審査
日本医師会医師賠償責任保険には、大きなメリットが二つあります。
まず、日医医賠責保険には、各科の専門の医師・医療の知識を持った弁護士、保険者などで構成される、中立的な調査・審査機関がある事です。事故を一つひとつ調査し、賠償責任の有無や額を判断します。(民間の医賠責保険では保険会社が判断しています)専門家による調査・審査が行われることは、医師の安心につながります。
交渉や訴訟は医師会が全面的にサポート
また、医師ができるだけ矢面に立つことなく紛争を解決できるよう、交渉・訴訟には医師会が全面的にサポートする仕組みが整っています。
弁護士に委嘱する場合でも民間の医賠責保険では自ら弁護士の手配を行わなければなりませんが、医師会は医療を専門とする弁護士の手配から費用負担まで、当事者に代わって行います。解決までにかかった争訟費用も医賠責保険で補償されます。
勤務先にかかわらず補償
日医医賠責保険は会員個人を対象としているので、勤務先を変更した場合や複数の医療機関で診療を行う場合であっても1事故1億円まで補償の対象となります。
医療事故の被害者には充分な補償がなされるとともに、会員医師自身が安心して診療を行えるようにするための仕組みが整っています。



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- 地域医療ルポ:秋田県横手市|山内診療所・三又へき地診療所 下田 輝一先生
- チーム医療のパートナー:看護師(手術室)
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- 日本医師会の取り組み:日本医師会の医師賠償責任保険
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- 医学教育の展望:学生の能動的な学びをサポートする
- 大学紹介:群馬大学
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