
小さな気付きも共有しチーム全体で
互いに学び合う
【泌尿器科】眞砂 俊彦医師
(鳥取大学医学部附属病院 泌尿器科)-(前編)
泌尿器科の仕事

――まずは、泌尿器科の仕事内容について教えてください。
眞砂(以下、眞):泌尿器科は、腎臓を含む尿路系の臓器や男性生殖器、副腎などの後腹膜臓器を扱う診療科です。これらの臓器に関連するものであれば、尿路感染や排尿障害の投薬治療からがんの手術まで、内科的なことも外科的なことも担当しています。腹腔鏡やロボット支援手術などの先進技術も積極的に取り入れています。
――先生は、どうして泌尿器科に進まれたんですか?
眞:あまり他の人がやらないようなことをやりたかったので、整形外科や泌尿器科など、特殊性の強い分野に興味を持っていましたね。臨床研修中は消化器外科や消化器内科にも誘われて、ちょっと迷いました。最終的には、ある程度早く一人前になれるという点が決め手になって、泌尿器科を選びました。
ただ、泌尿器科にはジェネラルな視点が求められる場面も多いんです。例えば救急外来でも、原因不明の腰痛などは、尿路系の結石を疑われて泌尿器に回されることが多いのですが、実はその中に、大動脈瘤などの重篤な病気が隠れていることがあります。こういう時、臨床研修で一通りローテートした経験が活きてくると感じますね。


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互いに学び合う
【泌尿器科】眞砂 俊彦医師
(鳥取大学医学部附属病院 泌尿器科)-(後編)
泌尿器科のキャリア
――泌尿器科に進むと、どんなキャリアを歩むのでしょうか。
眞:僕の場合、大学病院の病棟で、診断がついて治療方針が決まった患者さんを診るところから始め、次に外来で初診の患者さんを診るようになりました。外来の患者さんが多く、早くから外来に出るのもこの科の特徴かもしれません。
入局2年目には外勤で外来を担当し始め、診断や治療方針の決定に関わるようになりました。様々な症例を診るなかで、「この血尿は腫瘍かもしれないから、検査はこれとこれをやってみよう」という風に、自分なりのセオリーが徐々に定まってきたように思います。
入局4年目には、県立病院の一人医長を任されました。泌尿器科に来る患者さんには高齢の方も多く、様々な合併症を持っていることもあります。他科との連携もマネジメントするなかで、色々な科の先生にお世話になりました。すごく大変でしたが、やりがいのある毎日でした。
手術を極める
――鳥取大学の泌尿器科は、外科系が強いと聞きました。
眞:はい。うちの医局は、僕が入った頃はどちらかというと内科寄りでしたが、現在の武中教授になってから、特に手術支援ロボットのダ・ヴィンチを使用した手術に力を入れています。
――どんな手術ですか?
眞:ロボットのアームやカメラが、患者さんの腹部に開けた小さな穴から体内に入り、自由度の高い多関節鉗子を用いて患部にアプローチしていきます。術者はロボットの横のカートの中で、画面を覗きながら鉗子を遠隔操作します。操作感覚は少しゲームに近いかもしれません。腹腔鏡と違い、様々な角度から患部を見たり、直接手では動かせないような角度にも鉗子を入れたりできます。手ぶれも機械が吸収してくれるんですよ。
――体内や患部を立体的にイメージする必要がありそうですね。
眞:そうですね。僕の場合はまず開腹手術で解剖を学び、徐々にできる範囲を広げていきました。腹腔鏡手術は糸結びの練習から始め、指導医の助言を受けながら感覚を掴み、次にロボット支援手術という感じでした。
――学びを深めるための工夫はありますか?
眞:やはり、予習と復習を徹底することですね。うちの教室では、手術後のカンファレンスで図を描いてプレゼンすることになっています。そうやって、手術の時に何を思ってどう行動したのか、言葉を使った理論づけをしていくんです。立ち会った手術も含め、毎回スケッチやメモを書いてファイルに収めていき、自分なりの手術書を作っていく習慣があるのも、この教室の特長ですね。「自分がしたことを『何となく』で済ませるのではなく、きちんと言葉にしなさい」という教授の教えは、とても重要なことだなと思います。
また、手術をすべて録画して保存する体制が整っているので、過去の手術のビデオを観て勉強し、細かい部分まですべて共有する文化がありますね。一人の医師が経験できる症例は限られていますから、ビデオから得られるものは非常に大きいです。
当院は、診療科の垣根を超えた外科チーム全体でのカンファレンスなどの機会も多いです。普段から顔の見える関係を培うことで、互いに学び合える環境が根付いていると思います。
色々な人に来てほしい
――最後に、医学生へのメッセージをお願いします。
眞:泌尿器科は、どの科にも通じる幅広い知識と最先端の技術を身につけられる診療科です。短時間で終わる手術も多く、肉体的負担も少ないですし、女性の患者さんの中には女性医師を希望される方も多いので、男女問わず、志望する人が増えてくれたらな、と思っています。
2004年 鳥取大学医学部卒業
2016年10月現在 鳥取大学医学部附属病院 泌尿器科 助教



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