第4回 医学生・日本医師会役員交流会 開催報告

2016年8月5日、東京都文京区の日本医師会館に全国の医学生が集まり、日本医師会役員と活発な議論を行いました。

第4回医学生・日本医師会役員交流会は「若手医師の勤務環境とワーク・ライフ・バランス(以下、WLB)を考える」をテーマに開催されました。北は北海道から南は沖縄まで、全国から参加者が集まり、医学生からの問題提起と、パネリストによる話題提供を踏まえたパネルディスカッションを行いました。「医師がやるべき仕事をより短時間で済ませることができるように、AIなどの活用も考えていく必要があるのではないか」「WLBに関する大学教育は、色々なキャリアのパターンを経験した先生が参加するワークショップ形式で行うのが理想だ」など、様々な意見が飛び交いました。

タイムスケジュール

14:00~ 開会 総合司会 日本医師会常任理事 今村 定臣
14:05~ 挨拶 日本医師会会長 横倉 義武
14:10~ 第1部
問題提起・話題提供
・医学生からの問題提起
三浦 子路 旭川医科大学 医学部 1年
龍田 ももこ 東京大学 医学部 4年
井上 陽美 熊本大学 医学部 6年
・パネリストからの自己紹介と話題提供
蓮沼 直子先生
(秋田大学 医学部 総合地域医療推進学講座 准教授)
宮田 俊男先生(日本医療政策機構 理事)
川瀬 和美先生(東京慈恵会医科大学 外科学講座 准教授)
今村 聡(日本医師会 副会長)
15:50~ 第2部
パネルディスカッション
コーディネーター
日本医師会 副会長 今村 聡
16:50~ 総括 日本医師会 副会長 今村 聡
16:55 閉会

 

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【第1部】 問題提起・話題提供

医学生からの問題提起

一般の方から医師はどう映るか

旭川医科大学 医学部 1年 三浦 子路

sakoi医学生や医師は、医療従事者でない方々に「すごく勉強していて、何でもできる」人たちだと思われがちです。しかしこれが度を超すと、「何でもできて当然」、裏を返せば「少しでもできないとダメ」だと捉えられかねません。双方の間に信頼関係が築かれ難くなり、医療への距離感の増大と医療ミスへの過度な批判が助長される可能性を危惧しています。

 

医師の労働環境・ワーク・ライフ・バランスについての
アンケート調査~持続可能な医療を目指して~

東京大学 医学部 4年 龍田 ももこ

sakoi医師の労働環境やWLBに関するアンケート調査を医学生に実施したところ、受動的なキャリア観よりも能動的なキャリア観の持ち主の方が、自身のやりがいや興味を重視して職場を選択しており、他人がWLBを重視して職場選択することに対してもより寛容であることがわかりました。医学生世代の考えを発信していくことで、勤務医のWLBをより良い方向へ変えていきたいです。

 

医師のワーク・ライフ・バランス

熊本大学 医学部 6年 井上 陽美

sakoi出産しても働き続けていくためにはどうしたらいいかと考え、WLBやキャリアに関する医学生向けイベントを開催してきました。私がいま問題だと考えているのは、男女双方の意識の違い、ロールモデルとなる先生方のお話を聞く機会の少なさ、キャリア教育の大学間格差です。仕事と家庭の二者択一と思っている人には、働き方の多様な選択肢を知ってほしいです。

【第1部】 問題提起・話題提供

パネリストからの自己紹介と話題提供

医師のキャリアとワーク・ライフ・バランスを考える

秋田大学 医学部
総合地域医療推進学講座 准教授 蓮沼 直子

「ワーク」と「ライフ」は、双方完璧にこなさねばならないものではなく、相乗効果で高めあうような関係となることが理想です。医師のキャリアは必ずしも計画通りになるものではないので、自分がどうありたいかを考えながら進むべき道を決めることになります。その時々の状況によりロールモデルとなる人は異なるので、医学生の皆さんは、様々な先輩の話を聞いて自分自身の正解を見つけてください。

未来の医療はどうなっているのか?

日本医療政策機構 理事
宮田 俊男

学生時代に夏休みを活用してアメリカに臨床実習に行った際、現地の小児心臓外科医が、保育園のお迎えのために手術の途中で帰っていく様子を目の当たりにして、日本との働き方の違いにカルチャーショックを受けました。日本でも、医師の働き方は多様化が進んでいます。医学生の皆さんの世代の医師像は、我々の世代とは異なるものになっていくでしょう。

外科におけるやりがい、働き方、生き方について考える

東京慈恵会医科大学
外科学講座 准教授 川瀬 和美

shimizu外科医を対象とした調査の結果、男性の多くは家事を配偶者に任せて働いているにも関わらず、女性は7割が家事を自分で担っており、働きながら家庭も背負っていることがわかりました。この状況を改善するためには、外科医全体の労働環境を良くしていく必要があります。制度としての支援体制、家族の理解とともに本人がやる気を維持し、多様なキャリアを伸ばせるような環境の整備が必要です。

日本医師会の取り組み~医療勤務環境改善・女性医師支援~

日本医師会 副会長
今村 聡

高血圧の人がなぜその地域に多いのかを知るため、単なる予防啓発活動に留まらず、地域での生活を体験し交流を深めることを大事にしています。活動を通じて地域住民の血圧計所持率が上昇するなどの変化がありました。住民が健康について考えるきっかけ作りとなっている活動を、住民主体の継続的活動にしていくことが私たちの課題です。

【第2部】 パネルディスカッション

Q: 日本の外科医もワーク・ライフ・バランスが保てるようになるの?
A: ・外科医もワーク・ライフ・バランスを保てる状態を目指して、医師会・外科学会・各大学が取り組みを行っているところです。(川瀬)
・内科医・ICU医や看護師・薬剤師など多職種でしっかりチーム医療を行い、一人で抱え込まず、周囲の助けを得ることが大事です。(宮田)
Q: 医学生は、労働環境やキャリアに関する知識をどのくらい持っているの?
A: ・臨床研修病院のマッチング制度については「知っている」と回答した人が多くいました。しかし、医師のキャリアパスに関する知識は「知らない」が半数近く、労働基準法については「知らない」という回答の方が多かったです。これから働くうえでどういうことが起き、どのようなキャリアの選択肢があるのかという知識がないばかりに、「この診療科はきつそうだ」とイメージだけで重要な選択をしてしまうのは、もったいない。自分たちの働く環境やキャリアパスに関する知識を身につけること、様々な具体例を知ることが大事だと思いました。(龍田)
・情報がたくさんあるなかで、どこにアクセスして知識を得たら良いのかわからないという医学生もいると思います。ドクタラーゼや各学会による情報発信など、様々な医学生向けのチャネルを作っておくことが大事ですね。(今村)

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