医学生×デベロッパー
同世代のリアリティー
デベロッパー 編(前編)

今回のテーマは「デベロッパー」
今回は、デベロッパー業界で働く社会人3名に集まってもらいました。どうしてこの仕事を選んだのか、仕事のやりがいは何か、どのようなキャリアを歩むのかなど、詳しくお話を聴きました。
数十億円を手にできる仕事!?
天野(以下、天):まずデベロッパーとは、具体的にどのような仕事なのでしょうか?
大竹(以下、大):もともとDevelop、「街を作る」という言葉から来ており、オフィスビルやホテルリゾート、複合ビルを開発して「街づくり」をする業界です。
安永(以下、安):一般的にデベロッパーの仕事は、まず土地を買うところから始まります。次に、その土地にどのような建物を建てるかを計画し、ゼネコンに建築を依頼します。そして、建物の区画に店舗やオフィスなどを誘致し、その賃料で利益を得るという流れになっています。
田中(以下、田):弊社の主要な収入源はオフィスの賃貸ですが、住宅事業やホテルリゾート事業も行っています。ショッピングモールの店舗の賃貸が中心の会社もありますが、収益性が高いオフィスの賃貸が主な収入源という会社がほとんどですね。
出口(以下、出):土地を購入してからビルを建てるまで、どれくらいの時間がかかるのでしょうか?
田:弊社は人数が少ないこともあり、土地を購入してから実際にテナントが入るまで、10年ほどかかります。建築工事自体は3年ほどなので、そこに至るまでの計画に多くの時間を割いています。各部署から選ばれた数人が中心となり、社員全員が一丸となって、長期的なスパンで一つのプロジェクトに取り組んでいきます。
真野(以下、真):大きな額のお金を動かす華やかな仕事というイメージを抱いていましたが、長期的な計画を立てて地道に進めていく側面もあるのですね。
安:確かに、不動産の売買を通じて何十億円というお金のやり取りに実際に携わることができる仕事でもあります。そこには、やはりロマンを感じますね。
田:僕は新人の時、振り込みのために数十億円の小切手を手に銀行に行ったことがあります。さすがに手が震えましたね。
様々な部署にそれぞれの役割
出:社内にはどのような部署があるのでしょうか?
安:部署の半分くらいはビルの開発に実際に携わる「フロント部門」と呼ばれるものです。他の部署は人事部や総務部、経理部など、「バック部門」と呼ばれる一般的にどこの会社にもあるようなものです。
真:皆さんは現在入社から何年目で、どの部署に所属しているのですか?
安:僕は3年目で、フロント部門の住宅事業部に配属されています。主に会社で扱っている賃貸物件の管理をしたり、その運営計画を立てたりしています。
田:僕も3年目で、今は経理部で主に会計業務を行っています。法人税や土地・建物の固定資産税の申告・納付をしています。
大:僕は1年目で、新人研修中です。弊社では、1年目は年間で三つの部署を3か月ほどでローテーションしながらじっくり業務を学ぶことになっており、今はビル事業管理部にいます。
天:配属先はどのように決まるのでしょうか?
田:新人研修後に希望の部署を聞かれるのですが、最終的には人事部が決定するため、行きたい部署に行けるかどうかは半々という印象です。とはいえ、人事部も定期的に希望は聞いてくれるようなので、数年後には希望する部署に異動できるということが多いようです。
真:現在の部署の仕事には、どのようなやりがいがありますか?
安:不動産投資や、賃貸住宅についての基礎知識などを学べることが面白いです。
田:僕は経理の仕事にはもともとあまり関心がなかったのですが、経理部に配属されてから、全社の資金の動きを見るという観点から会社を知ることができるようになり、興味深いと思うようになりました。ここに配属されたことで、フロント部門以外の基礎となる部署がしっかりしていないと、会社自体が立ち行かなくなるのだと学びました。
出:部署を超えたやり取りはあるのでしょうか?
安:全社一丸となってプロジェクトに当たるため、部署間の交流は多いと感じます。全社が同じビルの近いフロアにいるので、立ち話などで仕事以外の話が自然と生まれることも、弊社の良い点だと思いますね。
田:社内でチームを組み、野球やフットサルをしたり、スキーに行ったりもします。コロナ禍以前は競合企業と熱い試合を繰り広げていたそうです。
医学生×デベロッパー
同世代のリアリティー
デベロッパー 編(後編)
コロナ禍で起きた変化
天:新型コロナウイルス感染症の流行により、事業への影響はありましたか?
安:収益の面で言うと、オフィス賃料はそれほど減少していませんが、ホテル部門が大きな打撃を受けてしまいました。現在運営しているホテルが潰れたというわけではないのですが、様々なプロジェクトの大きな見直しを余儀なくされています。
また、一昔前のデベロッパー業界のトレンドは東南アジアへの進出だったのですが、現在はリゾート地で仕事をしてもらう「ワーケーション」のように、オフィス以外にも働く場所を提供しようという動きもトレンドになっています。
田:加えて、デベロッパー業界全体では、以前から不動産以外にも多角的に事業を拡大していく動きがあったのですが、コロナ禍でその動きが後押しされそうです。例えば弊社では現在、弊社の事業との親和性の高いスタートアップ企業への出資などを行っています。
出:皆さんの日々の仕事への影響はありましたか?
大:部署単位で出社率を50%以内に制限しています。僕はコロナ禍で入社したのですが、オンラインでは気軽に質問もしづらいですし、人間関係が作りにくく、寂しさもあります。
デベロッパー業界に入るまで
真:皆さんは何をきっかけに、デベロッパー業界を志望したのですか?
大:僕は、文系職でありながら、街の中で大きな形として残るものをつくることに携われる仕事がほかにはないと思ったからです。
安:僕も、「地図に残る仕事」というものに憧れがありました。人の生活の根幹になるものをつくることに携わりたいという気持ちは、デベロッパーの志望動機として多いですよね。
天:出身学部の偏りや傾向はあるのでしょうか?
田:文系と理系が半々くらいですが、理系学部は比較的、大学時代に学んだこととつながりがある部署に配属される傾向がある気がします。例えば、建築学部の出身者はビルの設計をする部署に、電気関係を学んでいた人はオフィスの内装を管理する部署に行くといったことがありますね。
安:文系の場合は働きながら必要な知識を学んでいきますが、業務上、不動産の売買や投資に関する知識が必要になるので、経済系の学部は比較的多いかもしれません。僕は高校生の時からデベロッパー志望だったので、大学は商学部を選びました。
出:就職活動を行うなかで大変だったことはありますか?
大:いわゆるデベロッパーといえる会社がそもそもあまり多くなく、また社員の人数が少ない会社が多いため、基本的にどの会社も倍率が高く、大変でした。
天:どのような人材が求められているのでしょうか?
田:僕たちは様々な会社に発注をしながら、一つのビルを作り上げていきます。そのため、コミュニケーション能力の高さは重視される印象があります。
大:学生時代の部活やサークルなどのリーダーの経験は重視されると聞きますね。
知れば街の見方が変わる仕事
天:皆さんは今後、どのような形で、キャリアアップしていくのでしょうか?
田:若手のうちは3~4年ほどで部署を異動しながら、適性を探っていきます。30~40代で管理職になる頃には、若いうちに積んだ経験を生かすことのできる部署に進めるという形です。
出:昇進の際、具体的な評価基準などはあるのでしょうか?
安:人事部が判断するのですが、試験など定量的なものはないため、答えが難しいですね。最近では新規事業の提案が重んじられるようになってきているため、関係各所と連絡を取りながら旗振り役をしていく能力がより求められていくかもしれません。
真:今後、どのような仕事をしていきたいと考えていますか?
大:僕は不動産の売買に興味があります。土地の適正な価格や用途を見極める能力が必要なので、身につけていきたいです。
安:僕も同じです。弊社は社員の数が少ないため、そういったプロジェクトはそれぞれ2~3人だけで担当することになります。責任も大きいですが、自分の力で大きな取引をすることに憧れがあります。
田:僕は人々の生活に根差した仕事をしたいので、会社が買った土地にどういったビルやホテルを建てるかを計画する、不動産開発の仕事に関心があります。
天:皆さんのお話を聴いていると、普段僕たちが何気なく見ている街の建物は、様々な人々の思いを乗せて作られているのだと実感します。これからは、以前とは違う視点で街を歩くことができそうです。
※取材:2022年1月
※取材対象者の所属は取材時のものです。



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