k-mic 医療に変革をもたらすmedical entrepreneurへの道
k-medical innovation club 副代表 慶應義塾大学医学部3年 田村 友宏
●k-micとは
k-mic (k-medical innovation club) は、ヘルスケア領域の様々な課題に対して、ビジネスの観点から克服を目指すmedical entrepreneurの育成を行う学生団体です。2021年に設立されて以来、慶應義塾大学の現役医学生に加え、同大学理工学部や湘南藤沢キャンパス、更には他大学の学生も新たにメンバーとして加わり、合計30名で活動しています。イノベーションに不可欠とされる学際的なコミュニティを目指し、常に広く門戸を開放しています。
医療者を志す学生だからこそ見えてくる現代医療の限界。その壁を打破するアイデアを様々な分野の仲間と共に試行し、産業・政策・アカデミアを巻き込んで、痛みを抱える方々に明るい未来を届けられるように。日々、私たちは学びと実践を繰り返しています。
●団体設立の背景
医療は「基礎研究」と「社会実装」の両輪が駆動することによって進歩することができますが、日本はその間に「死の谷」が存在すると言われています。優れたアカデミアの発見があってもそうしたシーズが実用化へと橋渡しされない限り、日の目を見ることはありません。
日本は欧米と比べ医療機器分野の成長が遅いとされており、医療機器メーカーの世界ランキングトップ10に日本企業の姿はなく、年間7,000億円以上の貿易赤字を抱えているのが現状です。私たちはこの問題の根底に「医療分野のイノベーションを担う若手人材の不足」が眠っていると考えています。医学の知識とビジネスの視点、それらを併せ持つ人材を生み出していくことが必要です。
●活動目的
私たちの掲げるミッションは「様々な構造的課題を抱える日本の医療に対して、ビジネスの力による革新的な解決策を実装するmedical entrepreneurの輩出」です。海外ではHarvard Biotech Clubのように、学生レベルから医療領域のイノベーションを盛り上げようという学生団体の動きが盛んですが、日本ではまだそのような動きはほとんどありません。私たちが先駆けとして道を切り拓き、学生による医療領域のイノベーションを盛り上げていきたいと考えています。
●活動紹介
新たなアイデアを現実にするにはスキルとマインドの両方が必要になります。私たちは第一線で活躍する先生方を講師としてお招きし、様々なプログラムを企画しています。例えばStanford大学が提唱・実践するバイオデザインを学ぶワークショップや、先輩起業家による座談会企画など、部員からの高い満足度を得ています。他にも、病院へと足を運び、医療者や患者さんが抱える悩みを実際にヒアリングするなど、能動的な活動も行っています。一通りの座学や実践を終えた部員はチームを組んで、ニーズのブレインストーミングやプロトタイプ開発など、アイデアに留まらず、実用まで視野に入れて活動を続けています。
そうした活動から生まれたビジネスプランはビジネスコンテストでも評価を得ており、総勢126チームが出場した第6回健康医療ベンチャー大賞において決勝大会へと進出、学生部門オーディエンス賞を受賞しました。「医療を変えたい」という思いを共有できる仲間、課題を突き詰め解決への糸口を探す経験、そこにたどり着くための知識など、たくさんのものを得られるコミュニティです。
2022年度はプログラムの更なる充実と積極的な分野の横断・コラボレーションを目指して活動していきます。団体外の方々と交流する機会も多数用意しており、医療に興味のある高校生対象のイベントも企画しています。意欲ある若者が医療を変革し、明るい未来をその手で作り出せる日が来るまで、私たちは進み続けます。
●代表からのメッセージ
私も皆さんと同じく、人を救う仁術を志し、医学部に入った身です。しかし医学部教育を受けると、人を救う手段が臨床か研究かしかないと思い込んでしまいますが、実際はそんなことはありません。ビジネスを軸に、研究で生まれたシーズをいち早く臨床応用につなげたり、病気を未然に防ぐアプリを開発したりと、様々なアプローチがあります。
今の環境で抱く医学に対する違和感を払拭したい方、ビジネスで医療を変えたいと思っているが最初の一歩を踏み出せずにいる方、将来の選択肢として学びを深めたい方、ぜひお気軽に各種SNSからご連絡ください。きっと何か新しい発見やつながりが生まれると思います。
(k-mic代表 慶應義塾大学医学部3年 中原 楊)
Twitter:@kmedinnovclub
Mail:kmic.entrepreneur[a]gmail.com([a]をアットマークに変えてください)
第6回健康医療ベンチャー大賞にて決勝大会へと進出、学生部門オーディエンス賞を受賞。
※寄稿:2022年2月
※寄稿者の所属は寄稿時のものです。
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