保健所が担う様々な仕事 STUDY2

※この記事は、現役の医学生に各テーマについて書いていただいたレポートをもとに、編集部がリライト・再構成を行ったものです。

企画調整分野医学生レポート:保健所の災害時の対応について

災害発生時の保健所の活動意義

ひとたび災害が発生すると、インフラの遮断や傷病者の多発などにより、地域の医療提供体制が大幅に制限される可能性があります。そのようななかであっても、管轄地域の医療提供体制を維持するために、各保健所は様々な活動を行っています。

災害が発生すると、被災した都道府県は「災害対策本部」を設置します。保健所はその下に設置される保健医療調整本部と連携し、保健医療活動に関する情報収集・提供・整理・分析、JMAT(日本医師会災害医療チーム)等の保健医療活動チームの派遣調整・情報連携、救難物資の受け入れなどを行います。

災害発生初期に特に重要になるのは、情報収集・提供の部分です。保健所は普段から、管轄地域の保健医療活動の拠点として、都道府県と連携しながら保健医療活動の総合調整を行っています。その活動を活かして、災害時には被害状況や管轄地域の医療状況についての情報を収集し、必要に応じて市町村へ提供します。

保健所の各班の役割

災害発生時の保健所の活動は、大きく三つに分けられることが多いです。一つ目は保健所の機能確保・管内の情報収集・地域の医療確保などを行う統括班。二つ目は管内の医療機関との調整、避難所の状況把握、防疫活動などを行う医療福祉班。三つ目は避難所の衛生・食品衛生・水の安全確保などを行う保健衛生班です(班の名称は一例で、各自治体により異なります)。

 

統括班

統括班の役割の一つ目は、保健所の機能確保です。庁舎の安全確認や人員の確保、職員の食料確保、必要物品の確保などを行います。

二つ目は、情報収集管理です。収集する情報は、①地域の医療機能情報、②被災者情報(医療依存度の高い患者や、避難所・在宅被災者の状況)、③生活環境対策情報(食品営業施設等、動物管理所や収容動物、水道事業体、廃棄物処理施設などの状況)、④交通・ライフラインの被災状況などです。

三つ目は、連絡調整(渉外活動)です。これは、連携すべき他部門との連絡体制を確立させることで、情報収集活動により把握した必要人員や必要物資に関する要請を行うものです。

四つ目は、地域医療の確保です。発災直後は主に「災害派遣医療チーム(DMAT)」を支援する役割を担います。それから、保健医療チームが、避難所等への派遣の調整や、医師会等の関係機関・団体との緊密な情報連携を行います。また、医療福祉班と連携して、避難所での健康支援のニーズに対応するための活動を開始します。

 

 

医療福祉班

医療福祉班の役割の一つ目は、被災者への健康支援と感染管理です。これは発災後しばらく経ってから行われるもので、避難所や在宅被災者の元を巡回しながら、被災者の健康管理や健康相談に対応します。さらに、食中毒・感染症の発生を防止するための対策(食料品・飲料水の衛生管理、手洗い・うがいの呼びかけ、換気など)を行います。

二つ目は、被災者のこころのケアです。精神的不調を来した被災者への支援だけでなく、被災者の自助・共助機能の維持や精神的不調の予防に寄与する健康教育や普及啓発活動が重要とされます。

三つ目は、食支援・栄養指導です。食物アレルギー疾患患者や食事制限がある人など、食に関する要支援者についての情報を収集し、その数や食料の供給状況等を把握し、速やかに必要な支援を行います。また、災害が長期化する場合には、被災地住民の栄養実態調査を実施します。

四つ目は、難病支援です。特別な医療の確保が必要となる難病患者に対して、災害時の限られた医療資源の中で確実に医療サービスが提供されるよう特別な支援活動を行います。

五つ目は防疫です。この活動は、被災者の健康維持・増進という観点のみならず、地域の社会機能の維持・回復のためにも重要です。

 

 

保健衛生班

保健衛生班の役割の一つ目は、避難所や炊き出し施設等における食品衛生対策や、飲料水の確保・衛生管理などです。

二つ目は、排水対策・廃棄物対策です。排水処理施設や災害廃棄物処理に関する指導・助言・監視などを行います。

三つ目は動物対策で、被災した動物の保護などを行います。

四つ目は毒物劇物対策で、毒物劇物取り扱い施設の被災状況に応じ必要な指導・対策を行います。

 

このように、保健所は災害時に様々な役割を分担して行動し、地方自治体や外部組織と協力して活動を行っています。

記事制作協力

 

 

東海大学
医学部医学科5年
中島 伸

 

 

No.37