授業探訪 医学部の授業を見てみよう!【前編】
岡山大学 形成外科実習内「デッサン・美術鑑賞教室」「県立美術館ワーク」
デッサンを通じて、観察と表現を学ぶ
プロデザイナーの先生を講師に迎え、デッサンの基本や手術図の描画法、光と陰影の表現方法などについて学びます。演習では、季節の果物を、最初はそのまま、次に輪切りにしたものを観察しながらデッサンします。
作品について感じたことをディスカッション
各自が選択した絵画・彫刻などをプレゼンテーションし、作者の意図や表現方法についてグループでディスカッションします。自分自身を見つめ直すことができ、人それぞれの考え方の違いも実感できます。
美術館で実際の作品を前にワークを行う
目隠しをした相手と一緒に作品を楽しむブラインド・トークと、皆で実際の作品を前にして語り合うワークを行います。前者では、相手がわかっていないことを汲み取り、理解できるように話をすることを通じて、双方向のコミュニケーションの大切さを学びます。
(写真中央)作品を4~5分でプレゼンテーションします。
(写真右)学芸員がファシリテーターとなり、対話しながら作品を鑑賞します。
授業探訪 医学部の授業を見てみよう!【後編】
INTERVIEW 授業について先生にインタビュー
アートを通じて、幅広い教養を身につけた「良い医師」を育てたい
この実習は4~5年次の臨床実習で形成外科を回る2週間のうち、最後の2日間の午後に行っています。2016年に手術記録の質を向上させるために始めた医師向けのデッサン教室を、翌年から臨床実習中の学生にも展開し、2018年からはアートを鑑賞する時間を設けました。そして2020年からは、岡山県立美術館での実習を導入しました。
医学の知識と情報を座学で学ぶだけで「良い医師」が育つわけではありません。「良い医師」になるためには、観察力や表現力、コミュニケーション力に加え、幅広い教養や共感力を身につけることが大切です。デッサンによって観察力と表現力を、作者の意図を考えることによって自己を見つめる力を鍛えることができます。また、共にアートを鑑賞し語り合うことで、人と自分は違うという気付きが得られます。
欧米では約70の医学部でアート教育が行われていますが、日本にはほとんどありません。少人数の臨床実習だからこそアクティブ・ラーニングが行いやすい面もありますが、本来こうした教育はより早期に行われるべきです。今後は1~2年生の授業で展開できるよう、仕組みづくりをしています。
患者さんの頭の中は病気のことでいっぱいで、なかなか安らかになりません。しかし教養と共感力のある医師ならば、患者さんの職業や社会的背景を知ることで病気以外の話ができます。患者さんはその瞬間に病気を忘れ、救われるのではないかと思います。この実習を通じて培った観察力と表現力で確かな診療を行い、コミュニケーション力で信頼関係を築き、共感力で患者さんを救える医師になってほしいです。
木股 敬裕先生
岡山大学医学部 形成再建外科学講座 教授
学生からの声
見ることの重要性を感じました
4年 滝瀬 悠斗
デッサンを通じて、細かいところまで時間をかけて見ることの重要性を感じました。また同じ作品であっても様々な見方があることを実感できました。同じ病気の患者さんでも様々な背景の方がいるし、医療者によって見方も違うので、患者さんをより細かく、広い目で見なければいけないと気付きました。
皆の視野の広さや想像力に驚きました
4年 安藤 碧
絵を描くことが好きなので、とても楽しく授業を受けられました。将来、患者さんに病気のことを説明するとき、わかりやすい絵を描いて説明できたらいいなと思いました。また、医学部では同じものを見ながら誰かと話し合うという機会はあまり無いので、皆の視野の広さや想像力に驚かされました。
自身の先入観に気付かされました
4年 高見 昴秀
僕はもともと美術館に行くのが好きだったので、授業を楽しみにしていました。ディスカッションしてみると、普段あまり美術鑑賞をしない人とも感想を言い合うことができ、新鮮でした。ブラインド・トークでは、作品を詳細に説明するために新しい見方が必要で、今まで先入観を持って鑑賞していたことに気付かされました。
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