日本医師会の取り組み
「新型コロナウイルス感染症対応医療従事者支援制度」の概要
新型コロナウイルス感染症の感染が拡大するなか、医療従事者が安心して仕事に臨むための制度が立ち上がりました。
医療従事者のための支援制度
今村(以下、今):本制度は、新型コロナウイルス感染症の感染拡大が長期化するなかで、医療従事者が安心して医療に従事できるようにするための支援策です。医療機関がより少ない負担で、医療従事者に対し労災給付の上乗せ補償ができる仕組みとなっています。医療従事者の支援のために、日本医師会や、その他の医療団体に寄せられた寄付金、国の補助金などが活用されています。
――医療機関が本制度専用の「労働災害総合保険」に加入すると、医療従事者はどのような補償が得られますか?
今:新型コロナウイルス感染症に罹患し、政府労災保険等で給付対象となる業務災害を被った場合、休業補償金を受け取ることができます。また、万が一死亡した場合には、死亡補償金を受け取ることができます。
医療従事者の負担を減らし安心して働ける環境を
――この制度はどのような経緯で創設されたのでしょうか?
今:日本医師会では、新型コロナウイルス感染症の感染が拡大し始めた2020年4月から、医療従事者が感染し、休業を余儀なくされた際にも一定の収入が補償される支援制度を作るため、各医療団体の協力のもと、国に補助を要望していました。これと並行して、日本医師会に寄せられた寄附金の一部を活用して、新型コロナウイルス感染症の対応にあたる医療従事者支援制度を創設することを検討していました。
同年9月に、厚生労働省が、新型コロナウイルス感染症に対応した医療機関等への更なる支援として「医療資格者の労災給付の上乗せを行う医療機関への補助」を決定しました。それに伴い、「新型コロナウイルス感染症対応医療従事者支援制度」を創設することとなりました。
――本制度により、どのような効果が期待されますか?
今:医療従事者は、自身が感染することへの懸念のみならず、家族も含めた偏見や風評被害といった、様々なストレスにさらされています。業務に起因して新型コロナウイルス感染症に罹患した医療従事者を支援し、本人や家族の経済的負担が補償されることで、医療従事者が少しでも安心して働ける環境が作られることが期待されます。
また医療機関にとっても、新型コロナウイルス感染症対策における経費増や、患者数の減少等によって経営状況が悪化しているなか、少ない負担で医療従事者を慰労することができるのは利点であると言えるでしょう。
新型コロナウイルス感染が長期化し、日本社会では、社会経済と感染対策の両立を図っていく必要に迫られています。そのようななか、医療従事者は、感染や自らの命の危険を覚悟のうえで、国民の健康を守るため懸命に努力しています。日本医師会では、本制度をはじめ、医療従事者や医療機関を支援する様々な活動を展開しています。今後も国や各関係機関と協力し、支援策を一層充実させていく所存です。
今村 聡
日本医師会副会長
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