医学生×就職活動をした大学生
同世代のリアリティー
コロナ禍で就職活動して 編(前編)
今回のテーマは「コロナ禍で就職活動して」
今回は、新型コロナウイルス感染症の流行下の2021年に就職活動をし、就職先が内定した大学生2名に集まってもらいました。就職活動のやり方やオンライン化に伴う変化などについて、詳しくお話を聞きました。
就職活動のスケジュールって?
尾関(以下、尾):お二人は、どのような会社に就職が内定したのですか?
山田(以下、山):私はソフトとハードの両方を作る電機メーカーに就職する予定です。大学では、女性差別や貧困などの社会問題を学んでいるのですが、人々の社会基盤を支えることが社会的な課題の解決につながるのかもしれないと考えたのが、メーカーを選んだきっかけです。
阿部(以下、阿):私はゲーム関連会社に就職する予定です。もともとゲームやアニメが好きだったので、自分の興味のある分野で働きたいと考え、就職活動もエンターテインメント関係の企業を中心に行いました。ただ、ゲーム業界は選考の開始が比較的遅いので、この機会に他の業界も見てみようと思い、コンサルティング業界などの選考も経験しました。
永井(以下、永):就職活動はいつ頃から始めたのですか?
阿:本格的な選考は、3年生の終わり頃の3月1日から始まります。企業説明会や合同イベントが始まるので、学生はそれらに参加したり、エントリーシートを出したりします。
しかし、一般的に学生が就職活動に向けて動き始めるのは3年生の夏頃です。夏休み期間を中心に、インターンシップという就業体験に参加します。実際に企業で実習や研修に近いプログラムを体験することで、自分に合う業界かどうかを見極めます。
業界によってインターンシップの内容は異なっているそうで、私が参加したゲームの関連会社のものは実務に携わるというより、仕事内容を紹介するという形でした。
山:私が参加したメーカー系の企業のインターンシップはオンラインで実施されました。商品に関連した社会問題の解決案をグループでプレゼンテーションし、その様子を人事課の方が見て評価を下すという、実践的な内容でした。
4年生の6月頃までには内定先を見つけておきたい、という学生が多い印象があります。
エントリーシートには何を書く?
尾:エントリーシートは履歴書とは違うのでしょうか?
阿:志望動機や「学生生活で力を入れたこと」などを書きます。
志望動機は、自分の過去の経験とつなげて書くことが多いですね。ここで、自分の強みとなる部分についても触れられると良いようです。「学生生活で力を入れたこと」については、アルバイトやサークルのことを書く人が多いです。中には自分の経験を大げさに書こうとする人もいるようで、「就職活動の時はバイトリーダーと幹事長が増える」という噂もありますね。
山:私は志望動機を書くのに苦労しました。実体験に基づいたエピソードがあれば書きやすいのですが、そうでない場合は会社のホームページでサービスや製品を調べるなど、試行錯誤しました。
筧:エントリーシートはどのくらいの数を書くのでしょうか?
阿:応募する企業の分だけ書くので、私は30社分書きました。友人の中で最も多い人は80社、最も少ない人は7社でしたが、20~30社が平均だと思います。エントリーシートを出す時期も業界によって多少異なるのですが、3月に重なりがちなので、かなり大変でした。
医学生×就職活動をした大学生
同世代のリアリティー
コロナ禍で就職活動して 編(後編)
オンライン面接の悲喜こもごも
尾:書類選考の後は、面接を受けるのですか?
山:はい。私は3次面接までありました。おそらく一般的な回数だと思います。
阿:エンターテインメント業界は少し多いようで、私の場合は、5次面接までありました。最初は集団選考から始まり、徐々に人数が絞られていく形です。グループディスカッションでは、与えられたテーマについて4~5人で話し合いました。意見の内容より、グループの中での役割が見られているように感じました。1対1の面接では、エントリーシートで書ききれないことを深く聴かれる印象でした。
筧:今年は面接がオンラインでも実施されたと聞きますが、どうでしたか?
山:私が受けた面接はすべてオンラインでした。当初、服装は上半身だけ気を使えば大丈夫だと思っていたのですが、面接中に「立ち上がってください」と言われることがあるという噂を聞いて、上はジャケット、下は黒のズボンなど、普通の就職活動のような恰好で臨みました。
部屋のレイアウトを変えたり、カメラ映りが良くなるようにライトを買ったりしたのはオンライン面接ならではのことだったと思います。また、相手と目を合わせるには画面ではなく、パソコンのカメラをじっと見続けなければならないため、面接官の表情は視界の端で確認するくらいでした。
阿:私は対面とオンラインの選考の両方を経験しました。オンラインのグループディスカッションでは、面接官が画面と音声をオフにして私たちのやり取りを覗いているような状態でした。
キャリアセンターの方からは、オンラインでは頷き方など身ぶり手ぶりを大きくするようにと助言を受けました。
永:業界によって、選考時に求められる身だしなみに違いはあるのでしょうか?
山:業界によってかなり異なると思います。私は受けていませんが、銀行・保険業界などは服装だけでなく、髪形やメイクもかっちりしている印象です。
阿:ゲーム業界では、対面選考の際、派手な服装や髪形の人も多かったように思います。また、私は証明写真を撮った時、写真館で業界に合わせたメイクの仕方を教わりました。就職活動用の写真が何種類もある人もいるのではないかと思います。
尾:面接のほかに、オンラインでの選考はありましたか?
山:自己PR動画を撮って送るという選考も経験しましたが、こだわりすぎて時間と労力を費やしてしまったので、オンライン面接に比べるとあまり良い思い出がありません。
永:オンライン選考には何かメリットを感じましたか?
阿:地方の人にとっては宿泊・交通費や時間などのコストがなくなった点は、大きなメリットだと思います。ただ私は都心にいるので、競争相手が増えてしまったなあと感じました。
山:移動時間が節約できるからといって数多く面接できるわけではありませんでした。体力的にも、面接は一日最大3社くらいが限界でした。
尾:機械の不具合など、選考中にトラブルが起こった場合、評価に影響はあるのでしょうか?
阿:事前に、多少のトラブルが起きても選考のマイナスにはならないと説明がありました。とはいえ、トラブルが起きたときの対処方法で、パソコン操作に慣れていない印象を与えてしまっては良くないと感じました。もし選考中にパソコンの電源が落ちてしまったら、すぐメールなどで連絡を入れるなど、フォローも必要なのだと思います。
内定が出た後も考える将来のこと
筧:内定後はどのようなことをするのでしょうか?
山:私は内定をもらった後、毎月1~2回オンラインで行われる懇親会に参加しています。講師を招き、キャリアデザインについて5~6人のグループでワークショップなどをするのですが、やはり話題が続きにくいです。同期とも顔合わせは済んでいるのですが、実際に会っていないのでつながりはまだ希薄な気がしています。コロナ禍のうちはオンラインでのやり取りが続くのかもしれないと思うと、少し残念に思います。
阿:私は他の内定者と対面で顔合わせをし、今も連絡を取り合っています。また、就職先には内定者向けのアルバイトもあるので、希望者は業務を先取りすることもできます。
筧:今後の展望はありますか?
山:内定先で一生懸命働くつもりですが、先に就職した友人の中には転職を考えている人もいるので、新卒で入った会社で定年まで働くという時代ではないのだと感じますね。
阿:就職後に大学院への進学を考える人もいますし、自分の興味・関心やキャリア形成が第一だと感じています。ただ、私たちのような文系の場合は、転職が給与や育休などの待遇面で不利になるリスクもあるので、考えなければと思っています。
医学生の皆さんは、卒業時にどのような形で病院に配属されるのでしょうか?
永:三つくらいの病院とマッチングを行うのが一般的ですが、学生側も順位をつけることができますし、就職をするというより、卒業後の2年間に教育を受ける場所を選ぶという意味合いがあるので、就職活動とは選び方やモチベーションも異なるように感じます。
筧:大学卒業後も、当面は修練を続けるという形になりますが、医師になった後は、結婚や出産といった自分のライフイベントとキャリアをどう両立するかについても自分で考えないといけません。私は、資格を取ればある程度、自分の働く環境を選んで自由に生きていける仕事に就きたくて医学部に入ったのですが、将来についてはまだわからないことや不安もあります。
尾:今回は、一足先に社会に出ていく二人からお話を聴いて、視野が広がったような気がします。ありがとうございました。
※取材:2021年8月
※取材対象者の所属は取材時のものです。
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