授業探訪 医学部の授業を見てみよう!

浜松医科大学「医療法学」

この企画では、学生から「面白い」「興味深い」と推薦のあった授業を編集部が取材し、読者の皆さんに紹介します!

双方向性のある講義で法制度を基礎から学べる!

クイズも交えながら、
法制度についてスライドで解説します。

前期は法の制度論を中心に基礎を学び、後期は医師法や医療法、民事・刑事責任について、身近な事例を通じて学びます。ディスカッションを行うなど学生が発言する機会も多く、緊張感を持って授業に臨めます。

ロールプレイを通じて具体的な判例を学ぶ!

医師兼弁護士の3人が
模擬証人尋問を行った際。

実際の裁判事例を基にした模擬証人尋問を行います。授業の最後には各争点及び判決について自分の判断とその理由を投票するため、自分が当事者になった場合を想像しながら授業に参加できます。

希望者は研究活動に参加できる!

日本内科学会総会にて
学生が発表を行いました。

授業内容に興味を持った学生は、希望すれば論文を書いたり学会発表に参加することができます。コロナ禍以前は他大学と共同でリサーチ合宿も行っていました。現在は、論文の勉強会をオンライン上で行っています。

INTERVIEW 授業について先生にインタビュー

臨床以外への学生の興味・関心を引き出し
積極的な活動をサポートしたい

私が医学部卒業後、臨床に従事していた当時、大きな医療事故が相次いで起こり、メディアによる医療批判が繰り返し行われていました。医師と患者の関係が崩壊するのではという危機感を抱き、医療事故による紛争を医学と法学の両面から適正に解決できるようになりたいと思い、ロースクールに進学し、弁護士になりました。

医学研究には、基礎医学・臨床医学・社会医学の三つの領域があります。これまで我が国の社会医学系講座は主に公衆衛生学と法医学の二つでした。医療法学についても、公衆衛生学の中で、その他関連法規としてわずかに取り扱われるに留まっていました。しかし近年、医師のコンプライアンスが重要視されるようになり、医師も法律を意識しなければならないという議論が出始めました。また、いわゆる「2023年問題*」を前に、国際基準に則った医学教育の要件として、行動科学・社会医学・医療倫理学・医療法学の4科目の必修化が求められ、公衆衛生学から分離する形で、医療法学の授業が広く行われるようになりました

病院実習の期間が1.5倍となったことから、各大学で医学教育が前倒しして行われるようになるなか、医療法学は、基礎医学・臨床医学の知識がそこまでなくても学習することができるため、本学では、1年生のカリキュラムとなっています。1年生でも受けられる医学部らしい授業として、学生たちのやりがいにもなっているようです。

臨床は患者さんに寄り添うことができる重要な仕事ですが、医師には他にも様々なキャリアの選択肢があります。それを知ってもらうためにも学生の挑戦は全力でサポートしたいと思い、授業から医療法学に興味を持った学生には研究活動への参加を勧めています。

大磯 義一郎先生

浜松医科大学 医学部 法学教授

*2023年問題…2023年から、世界医学教育連盟より医学教育カリキュラムが国際基準に適合しているという認証を受けた医学部の卒業生でないと、アメリカで研修を行う資格であるECFMG認証が与えられなくなるという問題のこと。

学生からの声

授業への集中力が持続できました

2年 齊藤 百音

模擬証人尋問では、学生が原告・被告の裁判などのコメントを担当して読むこともあります。授業では毎回、前回の授業の最後に行った学生へのアンケートの中から印象的な回答を先生が紹介し、意見をくださるため、リモート授業でも集中が途切れることがありませんでした。

研究活動に参加する機会を得られました

3年 樋口 雄大

大磯先生は授業中、「さらに詳しく学びたい人は研究室に遊びに来ていい」と、気軽に行ける環境を提供してくださいます。私はそれがきっかけで先生のゼミに入りました。ゼミではまず最初に論文を読み、その後1年間かけて研究をし、最終的に学年全体の前で発表する機会をいただきました。

将来を見据えた研究ができました

4年 渡辺 莉代

私は1年次のゼミ配属では別の研究室に入っていましたが、大磯先生の授業を受けるなかでその内容に興味を持ち、今は先生の下で医療訴訟の研究をしています。将来、医療現場に出る立場として、医療訴訟の流れや司法の判断基準を知っておくことは重要だと感じています。

※取材:2022年4月
※取材対象者の所属は取材時のものです。

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