2025年2月20日
第8回 生命(いのち)を見つめるフォト&エッセー 受賞作品
小学生高学年の部(4~6年生)【文部科学大臣賞】
「かわいくない弟」
澤田 志歩(12歳)パリ(フランス)
うちの弟は、かわいくない。弟はダメと言われたことはする、ご飯は残してばかり、スーパーに行く時は、はしゃいで、転んで泣いてしまう。お母さんは大変だし、それを手伝わないと、弟は、また泣いて、わめいてしまう。どうして泣くのだろう? 声がかれるだけなのに。
最近は、知えがついてきた。また一段と世話をやかす。自分の取りたい物が高い所にある時、いすを使う。この知えのせいで、高いところに物を置いておけば大丈夫ではなくなってきた。
この前は、いすに乗って私のヘアゴムを取ってしまった。ダメだと言ったのに次は、いすに乗って、机の上にあった色えんぴつでかべに絵を書いていた。これを消すのは、お母さんや私の仕事なのに。
私のヘアゴムを使っておきながら本当に恩知らずだ。私が2才の時はもっとおとなしかったはずだ。お姉ちゃんは、難しい。
朝、一緒にテレビを見ていたら、動物のものまねをしてくれた。ライオンが「ガオ」とか、カモが「クワックワ」と。意外にもかわいくて、かわいげがあるじゃないかと思った。それもつかの間、昼にスーパーに行った時、弟が「ヤダ。」と私の手をふりほどいた。本当にかわいくない。スーパーに着いたらパプリカをさわろうとして、「やめなさい。」と言ったら、「ヤダー。」と大声でさけばれてしまった。周りの人がいっせいに私の方を見る。私にどうしろと言うんだろう。世の中のお母さん達は、大変だ。それを手伝っている子ども達も大変だ。
かわいくない弟は、ご飯を見た目ではんだんする。緑色をしていたら、食べない。一度口にして、好きではない物はよく覚えている。だから毎回きらいな物を見つけて食べない。そういう時は、のりでかくして食べさせている。案外、かしこくないかもしれない。のりのおかげで毎回気づかずおいしそうに食べるのだから。2才児というのは、難しい。
そんな弟でも、前まで発熱をすることが多かった。体が弱いのだ。夜中にけいれんを起こして、お母さんとお父さん2人、朝まで帰ってこないことがよくあった。そんな時毎回、「もし弟がいなくなったらどうしよう」と考える。そんな時思うのはただ一つ、「弟が無事に帰ってきますように」だ。いつも面どうくさいし、わがままだし、うるさい。「やめて。」と言ったことはする。かわいくない弟だけど「早く帰ってきて」と毎回そう思う。
そして毎回朝に帰ってくる。
弟がもどってきた時、よかったと思う。そして、大切な存在だと感じる。次の日には元気いっぱいで、うるさくて、いやなやつに変わる、やはり私は弟がかわいくないと思えてしまう。
でも、私は弟がきらいじゃない。
第8回 受賞作品
一般の部: 【 厚生労働大臣賞 】
【 日本医師会賞 】
【 読売新聞社賞 】
【 審査員特別賞 】
【 審査員特別賞 】
【 審査員特別賞 】
【 入選 】
【 入選 】
【 入選 】
中高生の部:【 文部科学大臣賞 】
【 優秀賞 】
【 優秀賞 】
【 優秀賞 】
小学生高学年の部(4~6年生):【 文部科学大臣賞 】
【 優秀賞 】
【 優秀賞 】
【 優秀賞 】
小学生低学年の部(1~3年生):【 文部科学大臣賞 】
【 優秀賞 】
【 優秀賞 】
【 優秀賞 】